熱伝導性

ダイキンは、今後の放熱・熱の移動などの課題に貢献するために、製品(樹脂、ゴム、コーティング、グリースなど)の幅広いラインナップに特殊な特性として、熱伝導性を加えていきます。

概要

熱伝導性ポリマーの必要性

一般的にプラスチックは、加工性および機械強度などの機械特性に優れ、幅広い分野で使われています。しかし、これら樹脂の熱伝導率は比較的低く、熱源周辺や金属代替用途では課題があります。樹脂に必要とされる電気的特性は、用途に応じて様々であり、ダイキンは、絶縁性と導電性の両方のソリューションを提供しています。


- 半導体や信頼性の高い電子部品に求められる冷却

これまで以上に小さな半導体パッケージに膨大な演算能力を詰め込むことで、電子部品からの熱の除去が問題になっています。5Gなどの次世代通信の進化に伴い、シグナルインテグリティのために低誘電特性を維持しながら、基板材料の熱伝導率を改善する必要があります。


- 自動車の電動化

モーター、インバーター、バッテリーパックなどの電動パワートレインは、燃焼エンジンよりも発熱が少ないが、その性能や安全性は温度にセンシティブです。これらのコンポーネントを設計する場合、十分な熱流を確保するために、各パーツの熱特性を考慮する必要があります。


- 金属代替

プラスチックは金型のコストが低く、設計の自由度があるため、金属の代替として優れています。一方で、汎用樹脂でのいくつかの金属代替用途では、熱伝導性が損なわれる場合があります。そのため熱伝導率の高いプラスチックが求められています。

ダイキンのソリューション

熱伝導性低誘電率 PFA樹脂 (開発品)

この材料は、フッ素材料の低誘電性を維持しつつ、PFA樹脂の優れた特性(溶融加工可能な樹脂の中でもトップクラスの熱的・化学的安定性)と高い熱伝導率を兼ね備えています。このユニークな特性により、PCB基板またはフィルムのようなエレクトロニクス用途に適しています。

特性

- 電気絶縁性: 樹脂の中でも最高クラス

- 誘電特性: 低誘電率、低誘電正接

- 耐熱性: 260℃

- 耐薬品性: ほとんどの薬品に対して優れる

- 難燃性: UL94 V-0、臨界酸素指数>95%

TC_PFA_image1.png

熱特性

測定方法 単位 開発品 一般グレード

熱伝導率


厚み方向

W/m·K

0.9

0.2

面方向

2.8

-

熱抵抗値

厚み方向 m2·K/W 3.3x10-3 10x10-3

測定方法: 周期加熱放射促温法

熱伝導率 (W/m·K)= ρ × Cp × α, ρ: 密度 (kg/m3), Cp: 比熱容量 (J/kg·K), α: 熱拡散率 (mS-1)

熱抵抗: 2mm, 1m2の場合

上記数値は、代表値であり、保証値ではありません。


TC_PFA-thermography

一般物性

Item 条件 単位 開発品 一般グレード

誘電率

6GHz

-

2.6

2.1

誘電正接

6GHz x10-4 9 3

体積抵抗率

JIS K 6911 Ωcm ≧1016 ≧1016

絶縁破壊強さ

IEC60243-1 /1mmt kV/m 44 44

耐トラッキング性

IEC60112 /3mmt V 600 600

引張破断強度

ASTM D 638 MPa 27 20
引張破断伸度 % 3 >100

曲げ弾性率

ASTM D 790 GPa 2.1 0.6

Izod衝撃強度

ASTM D 256

(notched)

J/m 32

NB

上記数値は、代表値であり、保証値ではありません。

熱伝導性PPS (開発品)

PPSコンパウンドは、熱的特性と機械的特性のバランスがよく、金属代替に適しています。

当開発品は優れた熱伝導と厚さ1mm未満の薄肉成形性を兼ね備えたことを特長とする材料であり、処方によって更なるカスタマイズも対応可能です。

熱物性

測定方向 単位

熱伝導性PPS

(低反りタイプ)

(開発品)

熱伝導性PPS

(高強度タイプ)

(開発品)

一般PPS

熱伝導率

面方向

W/m·K

12

13

0.3

厚み方向 W/m·K 2.5 2.5 0.3

測定方法: レーザーフラッシュ法

熱伝導率 (W/m·K)=ρ × Cp × α, ρ: 密度 (g/cm3), Cp: 比熱容量(J/g·K), α: 熱拡散率 (m2/s)

上記数値は、代表値であり、保証値ではありません。

TC_PPS_thermography

一般物性

上記熱物性に加え、優れた耐熱性と機械物性を有しています。

項目 条件 単位

熱伝導性PPS

(低反りタイプ)

(開発品)

熱伝導性PPS

(高強度タイプ)

(開発品)

密度

ISO 1183

g/cm3

1.7

1.7

引張強度

ISO 527-2 MPa 50 70

引張伸度

% 1.1 1.1

曲げ強度


ISO 178
MPa 80 100

曲げ弾性率

MPa 16,000 20,000

シャルピー衝撃強度

ISO 179-1, 2

(unnotched)

kJ/m2 5 5

荷重たわみ温度

(1.8MPa)

ISO 75-2 240 240

上記数値は、代表値であり、保証値ではありません。

用途

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熱伝導性材料は、自動車、エレクトロニクス、または航空宇宙などの様々な産業においてますます必要とされています。各用途ごとに、求められる熱伝導率を調製する必要があります。

ダイキンでは、幅広い材料のポートフォリオと複合技術を融合し、材料の機械的・化学的性質を損なうことなく、優れた熱伝導性を実現しています。

  • モータハウジング
  • インバータハウジング、基板
  • 電池パック
  • 熱交換器
  • 高周波PCB基板
  • アンテナハウジング
  • コネクタ
  • アビオニクスハウジング