新用途紹介
07/2026
ミリ波における伝送損失の低減に貢献
誘電体導波路向け フッ素樹脂
B5G (Beyond 5G)、さらに6G通信の実現に向け、ミリ波周波数帯の活用検討が活発化しています。ミリ波は高速・大容量・低遅延を実現する一方で、伝送損失が大きく、障害物による遮蔽を受けやすいという物理的課題を抱えています。これらの課題を解決するため、ダイキンは誘電体の中でも、特に誘電正接が低いフッ素樹脂(PTFE)を用いた「誘電体導波路」の提案により、新たな用途開発を進めています。本稿では、従来の伝送路の限界を補完する本技術の優位性と、具体的な用途の可能性について解説します。
次世代通信における伝送路の課題と背景
-
6G通信のインフラ構築において、ミリ波帯(20GHz〜300GHz)の効率的な伝送は重要なテーマです。現在、主に用いられている伝送路には以下の課題が存在します。
- 同軸ケーブル
絶縁体にフッ素樹脂を用いることで低損失化は可能ですが、ケーブルの構造上、ミリ波帯では「導体損(金属による損失)」の影響が極めて大きくなります。
- 金属導波管
ミリ波帯でも低損失な伝送が可能ですが、金属製のため重く、フレキシブル性に欠けるため、配線レイアウトに制約が生じます。
これらの背景から、低損失かつ自由な配線が可能な新しい伝送路へのニーズが高まっています。
PTFE製誘電体導波路の技術的特長
- ダイキンが提案する「PTFE製誘電体導波路」は、フッ素樹脂が持つ「低誘電率・低誘電正接」という優れた電気特性を最大限に活用したものです。加えて金属と比べて、柔軟性があり、配線設計性に優れます。
- 1) 構造と伝送原理
-
本製品は、内層にPTFE、外層に低誘電率PTFEを用いた柔軟性のある二層構造を採用しています。
-
導体損の排除:電磁波がPTFE内を伝播するため、同軸ケーブルのような導体損が発生しません。相互変調歪の低減:金属導体を使用しないため、導体間で生じる相互変調歪などの影響を低減できます。
図1. 誘電体導波路の構造
図2. PTFE製誘電体導波路(試作品)
- 図3. 誘電率と誘電正接の相関
- 2) 伝送損失値
-
各伝送路の伝送損失を比較すると、優れた電気特性を発揮することが分かります。PTFE製誘電体導波路は、PTFEの低誘電・低誘電正接特性が活かし、伝送損失の低減に寄与します。また、柔軟性があることから伝送路設計の自由度を向上させることができます。
- 表1.伝送路の種類と28GHzでの特徴
-
-
- 図4. 各伝送路の適用周波数帯
-
想定用途と導入メリット
PTFE製誘電体導波路は、柔軟性を求める通信機からの高周波伝送シーンにおいて、その真価を発揮します。
- 6G通信インフラ・不感地域対策
直進性の高いミリ波が届きにくい屋内やモビリティ内の伝送路としての活用が期待されます。リピーターや基地局数の削減とともに、効率的なエリアカバーに寄与します。
- 高度自動運転 (ADAS L4/L5)
自動運転の高度化に伴い、車載ネットワークの必要通信帯域は10〜40Gbpsクラスへと増大します。複数の高精度LiDARやカメラの信号伝送において、高周波同軸ケーブルの代替、あるいは補完的な役割を担う可能性があります。
- データセンター
クラウドサービスやAI処理の高度化に伴い、データセンター内ではサーバー間の通信において、より一層の高速・大容量化が求められています。PTFE製誘電体導波路は、このようなニーズに応える新たな伝送路として、データセンターにおけるサーバー間の高速・大容量通信への応用が期待されます。
まとめと未来への展望
フッ素樹脂は、次世代通信に求められる高速・大容量・低遅延を支えるキー材料です。ダイキンが得意とするフッ素樹脂PTFEの優れた電気特性を十二分に生かした、ミリ波帯向け誘電体導波線路を活用した新たなユースケースに対応してまいります。
ご質問やサンプルのご要望など、お気軽にお問い合わせください。
*記載の数値は代表値であり、保証値ではありません。


