お知らせ
11/2025
ダイキン工業 × 大阪大学
リチウムイオン電池の革新的な新規電解液設計アプローチを提唱
~リチウムイオン電池の高電圧化や安全性の向上に貢献~
ダイキン工業株式会社 化学事業部 商品開発部(山崎主任技師、大谷、谷、小林)と、大阪大学 産業科学研究所の近藤靖幸助教、山田裕貴教授らの研究グループは、リチウムイオン電池の新規電解液設計において、これまでの試行錯誤から脱却し、数値に基づく合理的な設計を実現するアプローチを提唱しました。
この発見により、リチウムイオン電池の高電圧化や安全性の向上が期待され、電気自動車や再生可能エネルギー貯蔵装置、データセンター用無停電装置を含む様々な社会インフラの革新につながります。
本研究成果は2025年10月25日に国際学術誌である「Advanced Materials」(インパクトファクター* 26.8)に掲載されました。
発表概要
リチウムイオン電池は、スマートフォンや電気自動車など、現代生活に欠かせないものですが、さらなる性能向上と安全性の強化が要求されています。リチウムイオン電池の負極材料には従来黒鉛が広く用いられており、新規電解液開発において黒鉛負極との良好な充放電反応を進行させることが不可欠な技術要素となります。しかしながら、電解液の種類によって黒鉛との充放電反応の良否が大きく異なり、新規電解液の探査には多くの時間とコストを要していました。
共同研究チームでは、上記課題に対し、電解液中の「リチウムイオン化学ポテンシャル**(リチウムイオンの安定性)」が、黒鉛負極の充放電反応を制御する重要な指標であることを発見し、数値に基づく定量的な電解液開発プロセスを提唱しました。
また、この新しいアプローチにより、特定の構造を有するフッ素化エーテル溶媒が黒鉛負極で良好な充放電を可能にすることを実証し、次世代電解液の有望な候補材料であることを提示しました。
この発見により、今後更なる用途拡大が見込まれるリチウムイオン電池の高性能化(高出力、高電圧、高安全)に貢献します。
ダイキン工業は今後も産学連携を通じた先端技術開発を推進し、新しい価値創出を目指します。
図1. 黒鉛負極へのリチウムイオン挿入反応の電解液中リチウムイオン化学ポテンシャル依存性の概略図
参考URL: 大阪大学 産業科学研究所
リチウムイオン電池の充放電反応の決定因子を発見!高性能化に向けた電解液の数値設計が可能に
* インパクトファクター:
ジャーナル(学術雑誌)の影響度を評価する指標(他の雑誌に引用された頻度から算出される数値)
** リチウムイオン化学ポテンシャル:
リチウムイオンの部分モルギブズエネルギーのことであり、ある系中(電解液中など)でリチウムイオンがどれだけ安定に存在しているかを示すものである。電解液中ではリチウムイオンには有機溶媒分子やアニオンが配位した状態(溶媒和構造)となっている。溶媒和構造によって、リチウムイオンの安定性、つまり化学ポテンシャルが異なる。例えば、有機溶媒やアニオンの配位力が強いほど、リチウムイオン化学ポテンシャルが低くなる。


