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PFOAに関する当社の取り組み

更新日:2024年3月29日


このページでは、PFAS(ペルフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル物質)の一種であるPFOA(ペルフルオロオクタン酸)に関し、その概要やダイキン工業の取り組みについてお伝えします。
当社は、今後も、過去にPFOAを製造・使用していた企業として、PFOAに関する動向を注視しつつ、行政とも協議を重ねながら対応を継続し、あわせて、当社のウェブサイトにおいて、地域の皆様をはじめとした多くのステークホルダーの皆様にPFOAに関する更なる情報と当社の取り組み状況についてお伝えしてまいります。

  1. 1) PFOAと当社のかかわり

     ・PFOAとは

     ・PFOAを規制する動き

     ・摂津市の水環境の現状

     ・健康への影響

  1. 2) これまでの当社の取り組み
  2. 3) 今後の当社の取り組み

     ・地下水の揚水・浄化

     ・遮水壁の設置

     ・地域・周辺住民への説明

     ・当社の姿勢

1) PFOAと当社のかかわり

PFOAとは

PFOA(ペルフルオロオクタン酸)とは、10,000種類を超える多様な有機フッ素化合物の総称であるPFAS(ペルフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル物質)の一種です。


PFOAは、化学メーカーに限らず、幅広い製造業種の様々な用途に使用されてきました。界面活性剤としてフッ素ポリマー製造時の助剤等に利用されたほか、PFOAを使用した化学製品は、撥水・撥油剤、防汚剤等、私たちの身近な製品(繊維、電子基板、自動車、食品包装紙、石材、フローリング、皮革、防護服等)に使われていました。 


PFOAは、2000年代初めに野生動物、ヒトおよび環境中に存在していることが報告され、その長期残留性が徐々に認識されるようになりました。

PFOAを規制する動き

2014年、環境省において、PFOAは、PFASの一種であるPFOSとともに、「要調査項目」として位置づけられ、知見の集積を図ることとされました。「要調査項目」とは、水環境を経由して人の健康や生態系に有害な影響を与えるおそれ(以下「環境リスク」といいます)はあるものの比較的大きくはない、または環境リスクは不明であるが、環境中での検出状況等の観点から見て、環境リスクに関する知見の集積が必要な物質として定められたものと規定されています。


その後、2019年に「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」の規制物質にPFOAが指定され、2021年10月には「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(化審法)に基づき、原則として日本におけるPFOAの製造・輸入・使用は禁止されることとなりました。なお、化審法では、PFASの一種であるPFOSおよびPFHxSの製造・輸入・使用も禁止されていますが、当社ではPFOSおよびPFHxSの製造・輸入・使用履歴はありません。


当社においては、2006年に、当社以外の世界の主要フッ素化学メーカー7社とともに、2015年までにPFOAおよび関連物質を全廃することを目指すことを内容とする「PFOA自主削減プログラム(PFOA2010/2015スチュワードシップ・プログラム)」に参画し、2012年までに淀川製作所(大阪府摂津市)でのPFOAの製造・使用を終了、2015年までに、海外を含めた当社グループ内でのPFOAの製造・使用を終了いたしました。


2020年5月には、環境省において、PFOAは、PFOSとともに、「要監視項目」に位置づけられました。「要監視項目」とは、公共用水域等における検出状況等からみて、直ちに規制対象となる「環境基準」とはせずに、引き続き知見の集積に努めるべきものとして定められたものとされています。河川や飲み水等における暫定的な指針値(以下「指針値(暫定)」といいます)として、PFOSおよびPFOAの合計値で50ng/L以下という値が設定されています。「指針値」とは、水環境における濃度として、他の曝露源からの寄与を考慮しつつ、生涯にわたる連続的な摂取をしても健康に影響が生じない水準をもとに安全性を十分考慮して環境省において設定された値をいいます。PFOAについては、国際的にも評価が確定していないため、現時点で毒性学的に明確な基準値および指針値の設定は困難である一方、監視強化の観点から目安となる値を示すことの意義を踏まえ、環境省において各国・各機関が行った評価の中で妥当と考えられるものを参考に指定したとの理由で、暫定値とされています。
なお、現在、土壌や食物(米・野菜等)に関する指針値は規定されていません。


2023年2月には、PFOAは、PFOSとともに、水質汚濁防止法上の「指定物質」に指定されました。「指定物質」とは、公共用水域に多量に排出されることにより人の健康若しくは生活環境に係る被害を生ずるおそれがある物質として政令で定めるものとされています。PFOAは、要監視項目に定められていること等を理由に、指定物質として指定されました。指定物質への指定により、PFOAの製造や処理等を行う施設を設置する工場等の設置者は、当該工場等において、施設の破損その他の事故によりPFOAを含む水が公共用水域に排出または地下に浸透したことにより人の健康または生活環境に係る被害を生ずるおそれがある場合には、PFOAを含む水の排出または浸透防止のための応急の措置を講じるとともに、事故の状況および講じた措置の概要を都道府県知事へ届け出ることが義務付けられています。


当社は、これまで上記に代表される規制動向を把握しながら事業を行っており、今後も、引き続き規制動向を注視してまいります。


摂津市の水環境の現状

環境省の公表によると、全国規模で行われた水質検査において、国内の一部の地下水や河川から、指針値(暫定)を上回るPFOA値が検出されています。摂津市のウェブサイトの掲載内容によると、2024年2月29日現在、摂津市の水道水のPFOA値については指針値(暫定)を下回っていることが確認されています。他方で、大阪府の公表によると、2022年8月に行われた大阪府等の調査において、摂津市の地下水からは指針値(暫定)を上回るPFOA値が検出されました。

こうした地下水の状況は、当社の製品が原因の一つとの認識に立ち、大阪府、摂津市とも協議し、2009年以降、地下水の揚水・浄化等の対策を講じてまいりました。今後もPFOA濃度を低減させられるよう、後述する遮水壁の対応と合わせて、引き続き地下水の揚水・浄化等の対策を継続していくべきものと考えております。

健康への影響

PFOAの健康影響については、各国・各機関の評価に相当のばらつきが見られる等、未だ国際的に統一された結論に至っておりません。なお、2023年12月には、世界保健機関(WHO)傘下の一機関である国際がん研究機関(IARC)が発がん性の証拠の強さを評価し、PFOAをグループ1に分類しました。もっとも、食品安全委員会の説明のとおり、国際がん研究機関(IARC)の評価は、人における実際の発がんの確率や重篤性を示すものではありません。当社は、引き続き、各国・各機関によるPFOAへの最新の評価を随時収集する等してPFOAに関する動向を注視してまいります。 

2) これまでの当社の取り組み

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1960年代後半から1990年代
当社では、1960年代後半から他社から購入したPFOAの取り扱いを開始、その後1980年代から自社でのPFOAの製造も開始し、他社からの購入品と併せてPFOAを使用するようになりました。撥水・撥油剤として使用していたほか、フッ素ポリマー製造時の助剤(添加剤)としても使用していました。1960年代後半から1990年代までの間、排気や排水を含めて法的な規制はありませんでした。


2000年頃
当社は、環境中におけるPFOAの長期残留可能性を認識したため、化学物質管理の一環として、PFOAの製造・使用時における環境排出の削減と、代替物質の開発に自主的に着手いたしました。


2006年
当社を含む世界の主要フッ素化学メーカー8社は、2015年までにPFOAおよび関連物質を全廃することを目指す「PFOA自主削減プログラム(PFOA2010/2015スチュワードシップ・プログラム)」に参画いたしました。


2009年
淀川製作所敷地内の地下水中に含まれるPFOAへの対策として、大阪府や摂津市と情報交換をしながら、自主的かつ継続的な浄化に取り組み始めました。


2011年
米国拠点におけるPFOAの使用を終了いたしました。


2012年
国内拠点におけるPFOAの製造・使用を終了いたしました。


2015年
海外拠点におけるPFOAおよび関連物質の製造・使用を終了いたしました。これにより、国内・海外の全拠点でのPFOAおよび関連物質の製造・使用を終了いたしました。


2020年
指針値(暫定)50ng/L以下を自主環境目標と捉え、専門家からの助言も受けながら、浄化・流出防止対策の取り組みの強化を決定し、地下水調査を開始いたしました。


2022年
2020年からの地下水調査結果や専門家からの助言を受けて、当社は、恒久的な浄化・流出防止対策として、敷地境界部分への遮水壁の設置や浄化設備の増強を決定し、設備設置・増強に必要な詳細調査を開始いたしました。

3) 今後の当社の取り組み

地下水の揚水・浄化

淀川製作所では、敷地内に井戸を設置し、くみ上げた地下水を濾過機能、吸着機能、仕上げ吸着機能を備えた敷地内の浄化設備を用いて浄化しています。 この浄化活動は、2009年に大阪府・摂津市と対策を協議の上で、当初の揚水量を年間3万トンと計画して開始されたもので、浄化活動の開始以後、地盤沈下の影響のないことを検証しながら徐々に揚水量を増やしてまいりました。現在、淀川製作所では、年間6万トンの地下水をくみ上げて浄化しています。


また、2020年からは、専門家からの助言を受けて、地下水脈の流れを分析した上で増設する井戸の位置を調整する等、より効率的な処理ができるよう改善を重ねています。


淀川製作所では浄化した地下水を、他の工場排水と合わせて大阪府北部流域下水道事務所 中央みらいセンター(下水処理場)に送水しています。当社は、大阪府より「工場からの排水は指針値(暫定)である50ng/Lの10倍の濃度を目安に」との要請を受けていることから、浄化した地下水を含んだ工場排水について、水質汚濁防止法等により制限されている項目に加え、PFOA濃度についても定期的にモニタリングしています。 

遮水壁の設置

専門家からの助言を受けて、淀川製作所の敷地の外周を囲い込む遮水壁を設置することを計画しています。この遮水壁は、敷地内になお残るPFOAを敷地内に留める効果を狙ったものです。


2023年6月には、テスト遮水壁を用いて、遮水壁の遮水性機能確認や騒音・振動等の施工時の周辺への影響、本格工事施工時の課題について、専門家と共に検証を行いました。これらのテスト遮水壁の検証結果を踏まえ、2023年11月、遮水壁建設工事に着工しております。

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遮水壁設置の様子

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遮水壁設置の様子

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遮水壁建設工事の様子

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遮水壁

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遮水壁

地域・周辺住民の方々への説明

当社は、これまで、淀川製作所の周辺の自治会に対して、PFOAの性質や、地下水の揚水や遮水壁の設置計画等、当社の取り組みについて説明の機会を設けてまいりました。また、2023年6月には摂津市民生常任委員会からの要請に応えて、委員会の委員の皆様に対する説明会の開催と、排水処理施設の見学会を実施いたしました。


当社は、今後も適宜、地域・周辺住民の皆様との対話の場を設けてまいります。

当社の姿勢

当社は、今後も、過去にPFOAを製造・使用していた企業として、PFOAに関する動向を注視しつつ、行政とも協議を重ねながら対応を継続してまいります。

関連項目